巨星、織田信長が堕ち、その天下統一の野望を豊臣秀吉が今まさに叶えようとしていた頃―――
関東平野は荒れ野と化していた。
二万の鉄機兵を擁する関東髑髏党が次々と村を蹂躙し、田も、畑も、人々の心も荒れ果てていた。
そんなある日、一帯に強い風が吹き抜け、砂塵の彼方に一人の男が姿を見せた。
名を問われ、男は答える―――
「浮世の義理も昔の縁も三途の川に《捨之介》」。
しかしこの男には、どうしても捨てられない過去があった……。
その過去を知る男が「無界の里」と呼ばれる色街にいる。
名を《無界屋蘭兵衛》。
そこは、かつてこの地に流れ着いた《蘭兵衛》と、関東きっての花魁《極楽太夫》が、共に築き上げた救いの里。
裏切りと謀略が渦巻く荒れ野の中、ここだけがただ一つ、心やすらぐ平和な場所だった。
その「無界の里」に突然、関東髑髏党の鉄機兵が襲いかかる。
異形の鎧に身を包んだ、その首魁の名は《天魔王》。
仮面の下に隠した素顔を見た者は、その命が尽きるという。
そしてこの男の過去もまた、《捨之介》、《蘭兵衛》と重なっていた……。
乾いた風が、因果の風車をカラカラと回し、その風向きの命じるままに再び三人の男たちが巡り合う。
やがて《捨之介》は「無界の里」を守るため、そして心にまとわりつく因果の糸を断ち切るために、《天魔王》の命を奪う決意をする。
手にするのは孤高の刀鍛冶《贋鉄斎》が鍛えし業物、「斬鎧剣」だ。
「無界の里」に集う者たちもまた、《天魔王》打倒に立ち上がる。
関八州荒武者隊を率いる若き傾奇者《兵庫》。
極秘の絵図面を手に《天魔王》から逃げ続ける女、《沙霧》。
そして諸国流浪のやせ牢人《狸穴二郎衛門》……。
関東荒野に漆黒の城、髑髏城が浮かび上がる。
鉄機兵が四方を固めるその《天魔王》の居城を、ある夜、《蘭兵衛》が密かに訪れる。
するとその目前で、《天魔王》がゆっくりとその仮面をはずした―――
K.Nakashima Selection Vol.27
花鳥風月バージョン第三弾!
"花""鳥"に続く第3弾のSeason風は、満を持しての捨之介、天魔王の一人二役オリジナルバージョンが復活!
※本商品は書籍です。