古き時代、日の国――。
大和朝廷は帝による国家統一のため、帝人軍を北の地に送り、そこに住むまつろわぬ民、蝦夷に戦を仕掛けていた。
その頃、都では、蝦夷の“立烏帽子【たてえぼし】党”と名乗る盗賊一味が人々を襲っていた。
それを止める一人の踊り女。
彼女こそ立烏帽子(中村七之助)。女だてらの立烏帽子党の頭目だった。
町を襲う盗賊が自分たちの名を騙る偽物であることを暴くため変装していたのだ。
そこに都の若き役人、坂上田村麻呂(中村勘九郎)もかけつける。
さらに“北の狼”と名乗る男(市川染五郎)も現れ、偽立烏帽子党を捕える。
この事件をきっかけに北の狼と田村麻呂は、互いに相手に一目置くようになる。
だが、北の狼と立烏帽子は、蝦夷が信じる荒覇吐【あらはばき】神の怒りを買い、故郷を追放された男女だった。
北の狼の本当の名前は、阿弖流為。
故郷を守り帝人軍と戦うため、立烏帽子と二人、蝦夷の里に戻ることにする。
荒覇吐神の怒りをおさめた阿弖流為は、蝦夷の兵を率い、帝人軍と戦う。
彼の帰還を快く思わぬ蝦夷の男、蛮甲(片岡亀蔵)の裏切りにあいながらも、胆沢の砦を取り戻した彼は、いつしか蝦夷の新しい長として一族を率いていく。
一方、田村麻呂も、帝の巫女である姉、御霊御前(市村萬次郎)や右大臣藤原稀継(坂東彌十郎)らの推挙により、征夷大将軍として、蝦夷との戦いに赴くことになってしまう。
阿弖流為と田村麻呂、互いに認め合う二人の英傑が、抗えぬ運命によって、雌雄を決する時が来ようとしていた。
朝廷に抗い続ける蝦夷の長・阿弖流為は《悪》か、それとも民を護る《正義》か―
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