一帯を仕切る老侠客<鰤の十兵衛>。
三人娘に己の縄張りを譲り渡し、やれやれ楽隠居の腹づもり。
「三人のうちの誰がこのおとっつぁんを大事にするつもりか、その心がけに応じて縄張りを分け与えよう。」
その父の言葉に、歯の浮くようなお追従を並べたてるのは、長女の<お文>と次女の<お里>。
しかしバカがつくほど正直で純粋な三女の<お光>、とうとう白々しいホラを吹けぬまま、ひとり家を追い出され、やがて行方知れずの哀しい憂き目。
と、ここまで来ればもうお気づきの方も多いはず。
この話、どこかで聞いたことのあるような……。
それもそのはずこのお芝居、全編いわば「シェイクスピアづくし」の奇妙な趣向。
「リア王」「ロミオとジュリエット」「ハムレット」など、かの沙翁・シェイクスピアが、生涯に残した数々の作品の筋立てを、縦に横にと織り込んだ、前代未聞、空前絶後、そして豪華絢爛のストーリー。
さて、残った<お文>と<お里>、いずれ劣らぬ邪悪な姉妹、父の縄張りを争って、やがて組を真っ二つ。
共に己の亭主を親分に据え、「紋太一家」「花平一家」などと名乗り合い、隙あらば相手一家を潰そうと牙剥き合うは、まるで「ロミオとジュリエット」。
その清滝村に、ぬうっとひとりのせむし男が現れた。
二組のヤクザが睨み合う、その間に割り込んで、漁夫の利を狙うその野心のよこしまさ。
あたかもリチャード三世を思わせるその男、名を<佐渡の三世次>。
<三世次>の手繰る権謀のカラクリに、蠢き出すは邪悪な人間たちの色と欲。
そしてマクベスならぬ<幕兵衛>が、ハムレットならぬ<きじるしの王次>たちが繰り広げる、血で血を洗う殺人絵巻……。
最後まで舞台に立っているのは果たして誰か、それは観てのお楽しみ。
「おお王次!どうしてあんたは王次なの?」
★再販決定!★2020/7/28(火)より順次出荷商品
完全超悪